…遠くから、定期的なリズムで電子音が鳴っているのが聞こえる。
かすかに香る薬品のような匂い。
柔らかい自分の上にかかる布団のようなもの。どうやら俺は、横になって寝ているらしい。
ここは、おそらく病院だ。
病院…?
俺は今、どうなっている?体の至る所が痛くて、身動きが上手くできない。
「っ…。はぁっ…。」
ただ自分の呼吸音が聞こえるだけで、かすれて声が出ない。何がどうなっているんだ。
困惑しながら俺は恐る恐る目を開けた。体は重く、動かせないために首だけで辺りを見回す。
窓から差し込む日差しが眩しくて、俺は顔をしかめた。時計を見ると12時を軽く過ぎた頃だった。
反対側を見ると、棚の上にいくつもの菓子が置いてあった。誰かが見舞いにでも来たのだろうか。一体誰が?
そこで俺は気付いた。気付いてしまったんだ。
ー自分が誰なのか思い出せないことに。