観覧ありがとう。
創作/版権ごちゃ混ぜだから、閲覧は注意してね。
勿論僕以外の人間が載せるのも歓迎するよ。
あと、薔薇だけじゃなくて百合も載せるからその辺は本当に気をつけて。
BLに関する雑談をしたり、BL要素を含む成りきりの募集をしたりするための掲示板です。
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第/五/人/格
百合注意。
カツンと革製のブーツが床を鳴らす。昔は意識して歩かなければ、この後を鳴らさずに歩くこともままなら無かった。今では音も無く人の背後に立つことも出来るようになったが、敢えてこの音を鳴らして歩く。彼女が居るであろう部屋が近付いていたから。
「空軍さん、来るだろうと思ってましたよ」
私が扉を開けると同時に扉に背を向ける形で椅子に座っていた彼女が振り向く。質素な部屋の小さなテーブルには、既に2人分のカップが置かれていた。
「相変わらず、準備が早いな」
紅茶の良い香りが鼻腔を擽る。余り紅茶には詳しくないが、彼女の淹れてくれる紅茶はとても美味しいと思う。優雅な生活とはかけ離れた生き方をしていた。小さい頃から、女らしくないとかガサツだとか、男みたいだとか。だから、紅茶の味なんて、どれも同じようなものだと思っていた。しかし初めて彼女が淹れてくれた紅茶を飲んだ時、紅茶の味を知った。何を食べても砂のようだと、何を飲んでも水のようだと感じていたのが幻想だったかの如く。
「空軍さんの音が聞こえてきましたから」
彼女は、色も景色も物体も、視覚情報として認識出来ない。盲目の彼女は、常に景色を音で認識している。私を、音で認識している。
事前に連絡もせずに、急に彼女に会いに来た私に彼女は微笑みを向けた。
目が見えない所為か、人間の醜さを余り知らないような無防備さに、私はとても危うさを感じる。幼い少女のような、柔らかい雰囲気に危機感を覚える。ここに訪れたのが、もし私では無かったら。
彼女は音で物を認識している。足音で誰が近付いて来ているのかを判断する。でも、人間ならまだしも、もし、もし、アイツらだったら。
「空軍さん?どうしましたか?」
無言の状態が続いてしまった所為か、少々不思議そうな顔で彼女は首を傾げる。見えていないであろう目を細くして。
ああ、私は。
そっと彼女の頬に手を当てる。自分のものとは違う、暖かい体温を感じる。じんわりと、掌に滲むような暖かさ。
「空軍さん?」
「心眼、私は……」
「はい」
「……」
私は、きっと、君が居なくなるのが、一番怖い。その柔らかい笑顔が、その暖かな体温が、二度と私の前に現れなくなると考えることが、一番。
「空軍さん、私はそんな簡単に消えませんよ。だって空軍さんが、守ってくれるでしょう?」
彼女の頬に添えた私の手を包み込むように、彼女は自分の手を重ねる。二重に感じる体温と、彼女の言葉にどくんと心臓が脈を打った。
またもや第/五/人/格。
百合注意。
趣味がバレるな。
「マーサさん」
鈴のような声で彼女が私を呼ぶ。殺伐とした雰囲気が充満するこの場所で、彼女だけが私の心の拠り所だった。
守らなければならない。
空軍という職と自らの無骨な正義感は、私には重荷でしかなかった。困っている人がいれば助けずには居られない。殺戮場と表現することが過言では無いようなこの場に来ても、私の浅はかな正義感は発揮される。助けなければ、守らなければ、それが私の使命なのだから。しかしどうしても、守れないモノが出てくると、私の心は自分を責める。守らなければという過剰な精神が、私の心を蝕んでいた。
「マーサさん、先程はありがとうございました。お陰で逃げられました」
彼女が来てからだった。目の見えない彼女が、こんな非道な場所に招かれた理由を私は知らない。しかし少なくとも、彼女と出会えたことは私にとって幸運だった。彼女に出会ってから、私の心は少しだけ軽い。
「いや、君の解読が速いお陰だ。此方こそ助かった」
通常の私であれば、解読速度は遅い訳ではない。しかし、誰かが助けを必要とした瞬間、私は自らも解除出来ない正義感で、解読が困難になる。だから私は使い物にならない。でも彼女は、持ち前の聡明さで解読が速い。私の無骨さを補うように、解読器を進めてくれる。彼女が居ると、安心して助けに向かうことが出来る。
「安心して解読出来たのも、マーサさんがハンターを引きつけていてくれたお陰ですよ」
柔らかく彼女が笑う。誰かを助けることが重荷になっていた私のどろどろとした感情が流されていく。
守らなければ。彼女を見ていると自然と思う。重く苦しい感情では無く、彼女を失いたくないという思いで。何時命が無くなっても仕方がない場所だからこそ、私は彼女が必要だった。その微笑みも、清らかな声も、私を癒し救ってくれる。
彼女の笑みに堪らなくなって、どうしても触れたくて、その綺麗な髪を手に取る。こんな場所だからこそ燻んだ色に見えるけれど、手触りはさらさらとしていて柔らかい。
「どうかしましたか?」
不思議そうに首を傾げる。肩につかないくらいの短い髪から、彼女の首が覗く。
ごくり。
唾を飲み込み自分で驚く。私は、何を。
「マーサさん?」
彼女の瞳に自らの顔が反射する。惚けたような、顔をしていた。
ああ、私は。私は、もしかして。
「ヘレナ」
「はい」
「抱きしめてもいいか」
「え?」
承諾を得る前に腕が伸びる。彼女の華奢な体を手繰り寄せると、ふわりと優しい匂いが鼻腔を擽った。