疲労の蓄積した身体を引き摺るようにして歩く。歓楽街の外れにある古びた木製の建物に着くと錆付いて一つ足を掛けるだけでも軋む年季の入った階段を登る。家賃は六万とちょっと。小さな流しと厠とシャワーだけのワンルーム。学生時代は、こんな草臥れた生活をするなんて思ってもいなかった。
ガタの来ている扉を開き、室内へ入る。無造作に切った髪は寝起きのように雑に整えられている。長い前髪が眼鏡に掛かり、煩わしくて仕方がないが、切りに行くのも面倒で気付かないふりをしている。
コートのまま寝台へと倒れ込む。冬場の寒さは就活時に購入したコートの隙間を抜け身体を冷やす。室内に入ったと言うのに、外より多少マシと言った程度の室温は、コートを着ていてもまだ寒い。
泣け無しの力を振り絞り、寝台から身体を起こしコートを脱ごうとしたところ、隣の部屋から怒鳴り声が響いた。
古い賃貸は壁も薄い。女性の怒号とも聞こえる声は、この部屋に住んでから毎日のように聞こえていた。疲れて帰ってきているというのに、自室ですら休まらない。聞こえてくるのはいつも通りの、不機嫌な声と子供のような小さな鳴き声。
虐待。
言葉だけは知っていた。身近に感じたのはこれまでの人生で初めてだが、本当に気分が悪い。でも、自分にはどうすることも出来やしない。
そう思っていた、今日までは。
母親と思しき女性の怒鳴り声と共に、何か物を投げるような音が複数聞こえ、何かを引き摺るような音。ガチャリと隣の部屋の扉が勢いよく開くと、それまで不確かだった言葉が鮮明に聞こえた。
「アンタなんて生まなきゃ良かった!もう顔も見たくない。帰って来ないで、何処かへ消えて!」
肌を強く打つような音がして、人が倒れ込む鈍い音。何処か良くない場所を打ったかも知れないと、不安になった。
女性はそのまま階段を降り、出掛けて行った。
気になってしまった。普段なら、聞かなかったことにする筈だが、その日は何故か、子供は大丈夫だろうかなんて柄にもない事を考えた。
恐る恐る扉を開く。そして、その日俺は、天使を見つけた。
提供
内海(うつみ)
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社会人一年目にして怒涛の多忙により、疲弊。学生時代はそこそこアウトドアだったものの、社会人になり友人は減り、休日を寝て過ごすだけの引き籠りがちに。趣味と呼べるものも無かったが、貴方を見つけた。
自分に甘く、貴方にも甘い。綺麗で可愛い貴方を甘やかしたくて仕方がない。
募集
12〜15歳
年齢の割に小さめ
容姿や性格などは貴方の好きなように。上記の大まかな設定を基準としていれば、生い立ちも問わないので。
活動は掲示板で、ゆっくりと描写を回していければ。
応募に関しては、貴方のお名前、年齢、容姿、生い立ち、出会いまでの経緯などをよろしくね。
それでは、気長に。