令和参年 睦月 拾柒日
今日は皆で鍋を食べた。
皆でご飯を作って食べるなんて随分と久しぶりだ。彼が野菜を泥付きのまま切ってしまったり、俺が色々入れるのを忘れたり、てんやわんやだったけど、その賑やかさが心地よくて、幸せだった。
案外なのか、やっぱりなのか、彼が手際良く物事を進めてくれて器用だなぁと思った。
来られないかもしれないと心配した彼も、急いで飛んできてくれて、はじめて皆揃うことが出来た。嬉しかった。
彼は、…無理を押してそれでも来てくれて、見ているだけでも胸が温かくなると幸せそうな顔をしていた。なんだか少し泣きそうになった。
家族みたいだと、家族だと彼らは言った。
正直、その単語を見るとどきりとする。
一度何もかも奪われた。喪ったんだ。手放しに喜べないところの方が大きい。
けど、同時に皆でご飯を作りながら、俺は多分、どれだけ傷つこうとひとと寄り添わずには生きていかれない質の人間なんだろうと思った。
そもそも、一人で生きていける人間なら、きっと此処には居ないんだろう。
此処の人たちは皆優しいよ。与えて、与えられて、温め合える人たちだ。
俺がもし、万が一にもなにか人としての道を違えたなら、きっと引っぱたいてでも叱ってくれる人たちだ。
この幸せが今度こそ、血の匂いに壊されることがありませんように。