デュラララチャット(仮)BL掲示板

BLに関する雑談をしたり、BL要素を含む成りきりの募集をしたりするための掲示板です。

  • どこにもいないあなたのための

    名無し
    No.388126
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    はじめまして。
    あなたは俺と会ったことがない。俺もあなたを一つも知らない。
    過去から今を経由して未来まで、あなたが俺の人生史に名を刻むことはない。
    そうだとしても、額に雨滴を受ければ空を見上げてしまうように、あなたの気配を感じればそれを思わずにはいられない。
    二月の暮れはまだ春じゃない。春はまだ遠くある。
    それでも風が温かさを運んでこれば、花の香りを漂わせたなら、春を思わずにはいられない。探さずにはいるのは難しい。
    それと同じこと。

    あなたは今もあなたの人生を生きている。そこに俺が交じることはない。
    俺はあなたのことを考えるけど、あなたはきっと洗剤の減り具合を気にしてる。
    いずれ俺の中からも消えてしまう。
    それでもこうして考えているときは、あなたのことを知っているような気がする。
    何一つ知らないあなたのことを。

  • 名無し
    No.388144
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    指のかじかむような寒い日だったでしょう。電話をしたのは。
    俺は公園に出て、意味もなくうろついて、ブランコを蹴飛ばしながら話をした。
    あなたの声が聞けるのが嬉しくて、でもそれを悟られたくなくて、声を低めて喋った。
    それでもまた会いたいと言ってしまうのは抑えられなかった。
    また会えたら嬉しいと思ったから。

    二人でよく酒瓶を空にしたのを覚えていますか。
    俺は一つも覚えていない。あなたのことは何にも知らない。
    マルボロのメンソールをあなたが名残り惜しそうに、一本だけと言いながら半分近く渡してくれたことも、もう記憶にない。
    白んだ空が欠伸と共にこぼす溜息のような、淡く柔らかな光がカーテンの裾から差し込んだ、ぼんやりとした部屋の中に浮かぶ灰色の煙をもう思い出せない。
    あなたの顔すら脳裏を滑っていく。

    あなたのことを一つも知らない。あなたも俺に会ったことがない。
    それでも空が翳れば雨を思う。蝉が鳴いたら陽炎を追う。
    一つも知らない、何も記憶にないあなたのことも。

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