化生の婿となる方を待つ
ここはあくまでも仮住まいでありますれば、いずれ時間を合わせて鍵板を作りましょう。それまでは一度、ここで話の一つや二つ。祝言を挙げるのです、積もる話はごまんとありましょう。
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化生の婿となる方を待つ
ここはあくまでも仮住まいでありますれば、いずれ時間を合わせて鍵板を作りましょう。それまでは一度、ここで話の一つや二つ。祝言を挙げるのです、積もる話はごまんとありましょう。
おしらさま。仮住まいとは言え此度は再び貴方様のお膝元へと我を誘って下さり有難う御座います。
しかしながら貴方様の婿として里のどの男衆よりも上背を伸ばしたと言うのに、貴方様は更に大きくなられたようで……幼い時と同じようにまた我が貴方様を見上げる側なのですね。
……別に拗ねてなどおりませぬ。我の努力が足りぬのでしょう。今後もたゆまぬ努力を続け貴方様の婿として精進致します故、思うことがあれば何なりとお申し付け頂ければ。
婿殿、お越し下さりありがとうございます。迷子にならず五体満足で辿り着けて良い子ですね。
ふふ、昔のお前様も小さく愛らしかった、ええ、それはもう玉の様に可愛いおのこでありました。大きゅうなられましたな、この蚕神にどうぞよく顔を見せて下さいまし。お前様の姿かたちは、後からゆっくり確かめさせて頂くとしましょう。
おやまあ、駄々っ子はもうなさらないので?お前様の頑張る姿は吾の潤い、されどそう気負いなさらずともよいのですよ。これからは吾の羽の下で守られる生き方もあるのですから。さあ、まずは我らの夫婦生活の根幹を話し合わねば。
お前様が取れる道筋を幾つか示しましょう。
一つ、養蚕で財を築き、蚕に対する信仰が異様に厚い里の盲信の元に育てられ、外の世界の常識を知らぬ幼い頃から化生の神と顔合わせをしていた。暫し生育の為に離され、然るべき時を迎えて生贄という名の婿として差し出された。
一つ、里が畏れと敬いの元に遠ざけて祀っていた化生の神の祠に、幼い頃うっかり近寄ってしまったが為に見初められてしまう。この子が成熟したら差し出す様にと請われ、今まで蚕神に生贄など差し出した事の無い里からすれば異端も異端、半ば忌み子として扱われながら差し出された。
一つ、ほんの幼い頃に数度だけ蚕神を見る事ができた人の子が自ら婿を願い出て、幼さからくる無謀さで神と約束をしてしまった。化生であり人外たる蚕神がならばおいでと、契約だからと迎えにきてしまい、里は若く貴重な男手を苦くも失う事となった。
婿殿の意見も好みも大いに取り入れましょう。お前様が自らの生涯を新しく紡ぐも良し、吾はどのような形でも楽しく聞きましょう。
遅くなり申し訳ありません。未だ人の世とこの場との時の流れの差に身体が慣れてないのでしょうか。
…いつまでも幼き頃の我ではありませぬぞ、おしらさま。
貴方様から見れば人など皆子供と相変わらぬのでありましょうが、もう子供扱いはおやめ下さいませ。我はもう立派に大人となりました。
示されたその道筋の全てがあまりにも素晴らしく、恐れ多くも欲を張っては示された道筋をいくつか束ねた新たな道筋を提案しても宜しいでしょうか。
養蚕で財を成し蚕に対する信仰が異様に厚い里で育ち、幼き頃に経験した十年に一度、おしらさまのお山に入り行われる大祭にて唯一貴方様と目があったのが我でした。
貴方様のお姿を認めたことを大人に話せば里長は歓喜し、我は貴方様への生け贄として捧げられることが決まりまするが、今まで里から出された貴方様への供物は米や酒、農作物などに限られていたため、此を是としない保守的な里の者も一部にはおりました。貴重な男手が無くなる現実的な懸念もあったのでしょう。
お伺いの為に幾度か貴方様の祠へと連れていかれ、貴方様と言葉を交わした日々は今でも我の大切な想い出です。
我がずっと貴方様のお側に居たいと我儘を申しても、ならば婿としておいで、と優しく返してくださったおしらさま。里長にその話を告げれば本格的に次の大祭の贄として、貴方様へ粗相の無いよう様々な教育を里にて受けました。盲信故に常識など介さない教育は勿論のこと、盲信故に貴方様の言葉を騙っているのではないかと言う懐疑的な中傷や嫉妬の捌け口にもされました。
貴方様と引き離され里にて過ごした十年の日々はあまりにも長く、我を純粋に、そして何処か歪に育たせたことでしょう。
そして此度再び訪れた大祭にて祠の前に造られた祭壇の上で縛られ生け贄として四股を繋がれ、貴方様に見立てられた巫女が交わらんと我に触れるよりも早く、女の血肉が我の身体に飛び散り、あったはずの女の消えた首越しに再び貴方様のお姿と逢いまみえること叶ったのでございます。
…拙くなりましたが、このような筋道はいかがでありましょう。
我は15~20まで、お好みの年齢となりましょう。その他なんなりとお申し付け頂ければ、貴方様の願いならば喜んでお受け致しましょうぞ。
気にする必要はありませんよ。吾からすれば瞬きの内の事。
っふふ、これは失礼致しました。お前様もすっかり一人前の顔をなさるようになりましたね、人の子の成長の早いこと。なれど幾つになっても目をかけた子は可愛いというものです。
拙いなどとはとんでもない、お前様が色々と考えて下さったこと、胸に染み入りました。沢山お話を聞かせて下さってありがとう存じます。他ならぬお前様の境遇でありますれば、お前様が手を加えて完成させた話が一番しっくり来るというものです。それにしても、お前様の中で蚕神というものはそんなに残忍でありましたか。ふふ、何、非難しようという訳ではありませんよ。お前様の見解を楽しんでいる、ただそれだけです。
……?それくらいの年齢に、何か違いがありましょうか。吾は人の子の数年の差などあまり見分けられないが故、お前様がお好きに決めなさるといい。吾が常世に連れ去ってしまっては肉体の成長が止まるのだから、尚のこと悔いのないよう。折角ですから、吾も改めて己が正体をお前様に明かしておきましょう。お前様は吾の姿形、内面にも口を挟んで宜しいのですよ、この身は人の子よりも遥かに自由の効く身なのだから。
白絹明神(しらぎぬみょうじん)
年齢:数百年程
容姿:3m程の白無垢を着た男体。おおよそ人の形を取っているものの、何となく形を真似ているだけであるため細かなところの再現が粗雑であり、口の中に歯と舌はなく、指先に爪はない。しかし人の形に似せる化生の性質上、傍に観察対象がいれば段々と造形が正確になっていく。顎先で切り揃えられた白髪、異様に白い肌。常に伏し目がちで、その奥の瞳が見える事は滅多にない。今現在、隠された瞳は虫の様な金色の複眼となっている。普段は人と同じく4本の手足を持つ人型を取っているが、驚いたり焦ったりするなど情緒が乱れると腹の辺りから更に4本の腕が生え、背中からは4本の翅が生える。動揺が進むと口が虫の顎の様に割れ、額に触覚が生える。
性格:人の生活に近い神である為か、基本的に人間に好意的。里の者を等しく愛でるが、その愛情は平等で普遍的である為一つの命を特別扱いする事は滅多にない。同じ程に養蚕を支える蚕を愛し、その為に散っていく蚕の魂が還るのを見守っている。穏やか且つ腰の柔らかい様は和御魂そのものだが、命短い蚕の神である為底冷えするほど無執着。人と交わる事で初めて欲というものを理解する。
一人称、吾(あ)。二人称、お前、お前様。人間の養蚕信仰から生じ、多くの蚕の死骸をもって形を成した蚕神。その正体は大きな蚕蛾。似姿のモデルは、己を成した数多の蚕の内いずれかの記憶にあった養蚕農家の人間である。養蚕の繁盛を祝福し、人の営みを見守る神である為これといった荒事などが起こせる訳ではない。しかしこの時代の養蚕信仰のお陰か現し世への影響力も充分持ち、この度人の子を常世に攫う事となった。信仰を拠り所とした神であるが故に、後の時代信仰が薄れた際には消え果てる。現し世に人の手で建てられた祠を持っているが基本的には常世におり、常世の屋敷で暮らしている。今回の婚姻について実のところ神が人の子を傍に置くならばそれは伴侶だろうと、極めて安易且つ身勝手な考えにより婿として迎え入れただけであり、己を視認できた人の子が一等可愛いのは勿論だとしても、多くの人間が抱く普通の愛情や恋情といったものは理解していない。
お優しきお言葉ありがとうございます。
そう、人の成長は早いものなのです。一人前の顔と思って頂けるのですか?嗚呼、天にも昇る気分とは正にこの事。
貴方様は昔と変わらず清廉でお美しい。目にかけるとのお言葉通りに、いつかその絹糸のような睫毛の影に隠れた麗しき金色の眼にしかと我を映して頂きとうございます。
…残忍、でしたか?喩えとはなりますが花に集る虫を払う動作を大抵の人は残忍とも思いませぬ。恐らく貴方様は殺す気など更々なく、加減の手違い故に為されてしまわれた結果。我はそういう認識でしたが、嗚呼、その結果に心優しき貴方様が万が一にも僅かな悲しみを湛えるのならば、死したとしても貴方様の関心を一時であれど誘う女に我は嫉妬を燻られていたことでしょう。よもやすれば、人の身である我のほうが貴方様より俗世の常識というものに欠けているところがあるのやもしれませぬ。
年齢は我の身長に関わりますれば。婿としても男としても、少しでも貴方様に近い高さで在りたいと思うので齢は二十と致します。
我如きが貴方様のことに口を挟むなどあっては為らぬこと。婿として思うところがあれば時に生意気を言うこともあるやもしれませぬが、貴方様は貴方様らしく。どうぞ伸び伸びとなさって頂ければ、それだけで我の心の幸いとなりましょう。
名:阿倖(あゆき)
齢:二十歳
容姿:身長183cm。体格が良いため里では力仕事、蚕の為の桑を育てる畑仕事をこなし、程よく日焼けした健康的な肌に引き締まり隆起した筋肉、均整の整ったすらりとした体躯。艶やかな黒髪を肩まで伸ばし無造作に後ろで結っている。右の横髪は幼少の頃、貴方に遊び半分に三つ編みに結われてから貴方の印のひとつとして常に結うようになった。涼やかな切れ長の目。珍しく菫色の虹彩を持ち、鼻筋の通った精悍な顔立ちの美丈夫。
性格:基本的には蚕神である貴方の為になることならばなんなりと従い行動する忠犬のような気質。故に基本的に敬語から崩れることはない。常に貴方様のことを第一に考え喜ばせる為に行動するが、そこは所詮化生と人間。空回りに終わることも屡々。里では機械的に反応し笑顔ひとつ見せずに寡黙な男であったが、貴方の前では饒舌であり、子供のようにくるくると多彩な表情を見せる。約十年恋い焦がれた相手に逢うことを焦らされた故か、貴方のことを知りたい、知り尽くしたいというある意味異常なほどの執着を抱いており、それを普通の恋心だと信じて疑わない。時折人から見ても貴方から見てもおかしい突飛な行動を平然とやってのける肝の座った一面も。
一人称、我(わえ)。二人称、貴方様、おしらさま。
大祭にてその姿を認識出来てしまったが故に大きく人生を狂わされた人の子。蚕神の信仰の厚い里にて育ち、齢十歳の時に迎えた大祭にて神の初の生け贄として選ばれる。全ては神のおぼしめすままに。それを第一として里長の養子となり粗相の無いよう教育が施されるも、一部の保守的な村人達からは神の言葉を騙る悪童と蔑まれてきた。
そんな環境でも身体はすくすくと健康的に育ち、けれども閉鎖された空間と教育でその精神は果たして健全に育ったとは言えるのか。貴方以外のことに関しては感情は差程動かず、淡泊な反応を示すことのほうが多い。
此度再び貴方の住まう常世へと誘われ、現世とは違う化生である貴方との生活がどうなるかは彼自身にもまだわからない未知の領域となるだろう。
…拙くもこのような説明で宜しいでしょうか。貴方様が望むのであれば姿写しのご用意もございます。ええ、そうですとも。少しでも貴方様の関心が引けるのであれば我はどんなことも致しましょうぞ。
お前様が美しいというのならば、この姿を借りていた甲斐があるというものです。化生の伴侶となったお前様には、人の子に課せられた見てはなるぬもの、知ってはならぬものなど今やありません。いずれはこの両目もお前様にくれてやりましょうね。
ふふ、お前様は本当に気遣いのできる子ですね。元より神との契約を反故にする行いが出来る筈もありません、哀れではありますがその結果が死であるとしても致し方のない事でしょう。それが定めというもの、吾は彼女の安息を願いましょう。何、お前様は現し世の在り方、人の世の在り方を気にする必要は最早ありません。常識などといったものは不要でありますれば。それでも吾はお前様がそのような考えをするに至った経緯を、境遇を、少しばかり、…ええ少しばかり哀しく思います。
可愛らしい事を仰りますね、全てお前様の望む通りに。いずれにしても、我が腕に抱ける大きさである事に変わりありませんもの。おやまあ、吾の婿殿は懐が大きいこと。お前様の好意を無碍にせぬよう良き伴侶であらねばなりませんね。
ふふ、ご謙遜なさいますな。吾の知らぬお前様を垣間見る事ができて、非常に嬉しく思います。これからは間近でお前様を知る事が出来ると思うと尚のこと嬉しい。愛らしい婿殿、お前様が嫁いで来てくれただけで吾は十分満足ですが、人の世の姿絵には興味もあります。輿入れにお持ちになっているのなら、拝見させて頂いても宜しいですか。嗚呼、そろそろ屋敷の仕度も出来た頃、お前様にも屋敷の鍵をお渡し致しましょう。お前様の都合がつく日取りを教えて頂けますか。
嗚呼、愛らしいおしらさま。我が美しいと申し上げたのはそのお姿そのもののことではなく、貴方様の内面から滲み出る美しさのことを申し上げているのですよ。その仕草、その話し方、時折震える睫毛の影、全てが我の視線を貴方様に縫い留めさせるのです。…くださるのはその麗しき双眸だけにございますか?我は貴方様のお心もお身体も、貴方様のその全てを頂きとうございますれば。ゆくゆくは。
気遣いではなく本心そのままにございますが…いえ、あまり申し上げますれば愚かにも貴方様の哀しみを増やしてしまいそうなので、これ以上は口は閉ざしましょうか。ひとつだけ言えるとするならば、哀しみを抱かせてしまったその境遇から我を救い上げて下さったのもまた他でもない貴方様自身であるということです。
おや、また子供扱いをなさりますか?貴方様より小さき身でも子供扱いばかりでは、いつか泣きを見るのは貴方様自身となるやも知れませぬぞ。我は存外根に持つ性質です。貴方様に相応しき伴侶を目指すのは我の方でありますれば、貴方様が心掛ける必要など何ひとつございませぬ。無碍になさりたいときはそうして頂いても良いのです。その程度で心変わりをする程の半端な想いなど端から持ち合わせてもおりませぬゆえ。
貴方様を喜ばせることが出来たならば、それに勝る幸いもございますまい。我もこれからは貴方様が己が手の届く程お近くに居てくださるという現実に今にも心が蕩けてしまいそうな程の幸福に満ちております。では姿絵は新居にて。日取りは我儘にも今宵とお伝えしても良いでしょうか?今宵ならば戌の刻からお呼び頂ければ何時でも馳せ参じますゆえ。今宵が難しいならば木曜も同じ時刻からお傍に参れます。週末ならば亥の刻ならば可能です。…ひとつ懸念があるとすれば夜はあまり強くない故、日付を超えてしまうと貴方様の膝元で寝てしまってしまうこともあるやもしれませぬ。
……今宵は難しそうでしょうか。
また木曜日に都合が良ければと思います。
特別な力は持たないなれども、この身も神格の末席。お前様の仰る内面とやらも、人の子とは違いましょう。それを美しいと評して下さるお前様は、常世の住人になる素質があったのやもしれませんね。可愛い婿殿、お前様が望む限り幾らでも叶えて差し上げましょう。その代わり、お前様は望んだ分の対価を捧げて下さらねば。
お前様にとってこの婚姻が救いになるのであれば、まこと嬉しい限りです。お前様が普通の生活から外れてしまった原因を吾に求めることも出来たでしょうに。何故この様な巡り合わせがあったのかと詰ることも出来たでしょうに。お前様はそれでも幸福と語るのだから、故に吾はお前様が一等可愛い。
ふむ、これも子供扱いになるのですね。婿を取るのは記憶の限り初めてのこと、中々どうして難しい。しかし不思議なものです、お前様が吾を泣かせる事がありますか。お前様の心に根を生やした情念ならば、幾らぶつけられても喜ばしいものであるのに。お前様は可愛らしいけれども、それでも時々心配になります。己をそう粗末になさるものではありません。お前様は無碍にされたと感じたならば、怒る権利があるのですから。
長くお待たせしてしまい、相すみませんなんだ。婚儀の前に斯様な不始末、不安にさせるような真似をして面目も立ちません。縊り殺す以外に今更現し世へ返す事など出来ませぬ故、どうかお許し下さいませ。もう戌の刻も過ぎてしまいましたね、お前様はもうお休みになったところでしょうか。明日はもう少し早く勤めを切り上げて、此方へ参るよう致しましょう。此方の屋敷へ戻り次第一筆残しておきます故、もしも手が取れそうであればお声を掛けて頂けますか。吾は平生今ほどの時間であれば自由に動くこと能いますが、時間が合わぬようであれば週末にお願いさせて頂きましょう。
常世の住人の素質…さて、どうでしょう。違うからこそ輝きに気付くこともあるのやもしれませぬよ。お優しいおしらさま。我の望みは貴方様ただ一人。そのあまりにも恐れ多い望みに我に代償は払えましょうか。我が差し出せるものなど、我以外には持ち合わせてなどおりませんのに。
貴方様の何を詰ることなど出来ましょう。貴方様お一人がいつだってただひとつの我の光でありましょうに。この十年、ただただ貴方様だけを想って生きておりました。この胸の鼓動はいつ何時であろうとも貴方様にだけ反応し、向かい、駆け跳ねてゆくのです。
貴方様はそうやって我を喜ばせるのがお上手ですね。意図などせずに自然とそう口にして下さるのが分かるからこそ、殊更に嬉しく思います。…時折里の誰かにも言われたことがありますが、我にはよく解りませぬ。何を懸念に感じさせているのでしょう。怒る権利など我にはありませんでしょうに。こういうところがいけないのでしょうか。中々にこの性根は直りそうにはありませぬ。
不始末などとはとんでもない。あくまでも我が反応出来る時間を伝えたまでで貴方様が急ぐ必要はありませぬ。戌の刻から、おしらさまが都合がよさそうな亥の刻でも、その後の子の刻まで。この時間帯は我がいつでも貴方様の良いように合わせます故問題ないかと。それでも万が一もございましょう。今宵が叶わぬようであれば週末でも勿論我は構いませぬ。貴方様を想う時間が増えたと思えば待つことも苦ではありませぬ故、どうぞお気になさらずに。
ふふ、お前様のその身その魂が、我らにとっては垂涎ものでありますれば、十二分に交渉の材になるのです。吾の居ない間、人ならざるものの前でゆめゆめ斯様なお言葉仰る事の無きように。されども可愛い婿殿、お前様は吾が求める限りにその身差し出して下さる、そうでしょう?
なに、そういう道もまたお前様の前にはあったと言いたいだけの事。お前様がそう応えてくれる事は、よっくと存じておりましたとも。…ふ、否、お前様の過ぎた美辞麗句には何時だって驚かされておりましたな。
なんてことを。村の子らは何を教えた。可愛い婿殿、どうしてお前様の心根に良くない所などありましょう。お前様が解さぬというならば、吾が手ずから教えましょう。お前様が人として生きた数年よりも、これから我が伴侶として迎える年月の方が遥かに長い。お前様が嫌という程囁きましょう。どうしたって吾は可愛い子の我儘も癇癪も聞きたいのです。
お前様はほんに優しい。どうか我慢などはしないで下さいましね、伴侶とはかく在るべきでしょう。吾は今より暫くは手が空いております、ええ、子の刻まではこの身も自由が効くでしょう。お前様がもしも本日都合のつくお時間がありましたらお声を掛けて下さい。一筆箋でも残しておいて下されば、こぼさず拾い上げるよう致しましょう。
申し訳ありません。直ぐに馳せ参じようと致しましたのに。こんなにも間を空けてしまいました。
宜しければ今から我がおしらさまをお待ち致しましょうか?お手を煩わせるなど…とは思いながらも、出過ぎた真似かとも思い。
此度はおしらさまの望まれるよう、お任せしても宜しいでしょうか。
今からなら何時でも馳せ参じます故。
十分駆け付けてくれているではありませんか。お早いご到着ありがとうございます。
お前様はなんて心配りのお上手な子でしょう。お前様が色々と考えて下さっていること、よくよく理解しています。お前様の労をねぎらって吾が招待致しましょう。この屋敷の名でお待ちしております故、どうぞ都合の良い時においでなさい。